桜の季節のコラボ本だ
たぶん10年以上ムカシになるだろう。内藤国雄九段(八段だったか?)が、テレビのバラエティー番組でお笑いタレントから「コンピュータとやったら勝てますか?」と訊かれ、「あんなゲームを作っているのは三段か四段の連中ですよ。そんなモンに負けるワケないじゃないですか」とムッとしたような顏をして答えていたのを思い出す。内藤国雄さんは将棋を指すかたわら『♪おゆき』というヒット曲で歌番組にも露出していた時代があったのだ。
何百手も先を読むというプロ棋士の脳力にコンピュータではとても太刀打ちできないだろうと言われていて、内藤さんにも「そんな器械ごときに、、、」という自負があったのだろう。
しかし、内藤さんの時代から幾星霜、コンピュータの研究開発は急激に進み、それに伴いプロ棋士を脅かすほどの力をつけたコンピュータ将棋まで出現するに至り、無視できなくなった将棋連盟はプロ棋士に対して「コンピュータとは公式の場で指してはならない」という通達を出すワケだ。
プロ棋士とコンピュータではどちらが強いのか?
これは将棋ファンのみならず一般的にも興味のわくテーマだ。
女流棋士、プロ棋士それぞれの第一人者が対戦して1勝1敗。そしてついに現役を引退したとはいえ、棋界最高の人気者で永世棋聖にして日本将棋連盟会長の米長邦雄が登場しコンピュータ将棋No.1のボンクラーズと対戦するという運びになるワケだ。
この本は、
『勝ってあたりまえ、負ければ石つぶて』
という損な役割を敢えて引き受けた米長邦雄のドキュメンタリーだ。
コンピュータ棋戦のすべてを語る
永世棋聖米長邦雄日本将棋連盟会長
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中央公論新社
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ニコニコ生放送で
100万人が見守った
第1回将棋電王戦
「米長永世棋聖vs.ボンクラーズ」。
その激闘の裏側には何があったのか。
結局、人間がコンピュータに敗れるという結果になるのだが、敗者米長邦雄が、対コンピュータ戦にどのようにして望んだか、プロ棋士対コンピュータとの将来などを率直に語っていて興味が尽きない。とくに対戦相手のコンピュータに対して戦友のような眼差し情を向ける米長さんの姿勢に惚れてしまう。
勝負に賭ける男たちの姿には将棋の知識がなくとも感動を覚えるだろう。
米長Vsコンピュータ将棋開催のことはずいぶん話題になったから知っていたが、対戦のときはインドにいたために、結果については本屋でこの本を手に取って初めて知ったことになる。
一芸に秀でた人の姿は本当に美しいものだとつくづく思う。
そのインドで撮った写真を整理し始めている。
プリントアウトしてブックを作ろうというワケだ。
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用紙だとかインクだとか消耗品の減りも激しく、なにか不足なモノが出るたびに西新宿へ走ることになる。出費もバカにならない。
西新宿に出て、ニコン、アサヒペンタックス、エプソンなどの写真ギャラリーをのぞいたり、オームの落書きを発見したり、アフガニスタン青年と出会ったりするワケだ。そしてついでにブBook1st.に立ち寄っては米長邦雄さんの本を買ったりしたのだが、本日はこんな本を買ってきた。
枡野浩一 短歌
杉田協士 写真
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雷鳥社
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さよならをあなたの声で聞きたくて
あなたと出会う必要がある
ロングロングショートソングロング
出版不況と呼ばれるなか、シリアスな写真集の出版は少なくなって、こんなふうに、コラボレーションというのか異ジャンルの表現者の共同作業が多くなっている。
この本は枡野浩一(歌人=短歌)と杉田協士(映画監督=写真)のセッションだ。
コーヒー飲みながら一挙に読み切ってしまった。
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