クタ・バリ:白昼の女スナイパー
この暑さの中エアコンもない狭い部屋で写真の現像をしたりブログの更新作業。パソコンを長時間酷使していて、気がついたときはパソコンが異様な熱を帯びていた。これはヤバイと思いUSBタイプの小型扇風機を買ってきてパソコン本体に風を送っているのだがあまり効果も感じられない。
さて、
世界有数のリゾート地に成長したバリ島だが、ここに至るまでには悲惨な歴史もあって、2005年200余名が亡くなったクタビーチでのディスコ爆発事件だ。リゾート地でバカンスを楽しんでいてもテロに巻き込まれる時代になったニュースは世界中を震撼させた。
その事件の犠牲者の慰霊塔がクタのレギャンストリートに建っている。
この慰霊塔の左側、青いフェンスに囲まれているのが事件のあったディスコの跡地で現在は駐車場になっている。
爆破事件以降高級リゾートホテルでは車の入場時には底部をミラーで写し出したり、トランクを開けさせたりとセキュリティもかなり厳しくなってる様子だった。ハードロックカフェ・ホテルなどではお客の手荷物も開けさせるほどナーバスになっている。
原理主義者から見れば、西側諸国の退廃がクタにあるということなのだろうか。
難しいことは考えないニッポンの浮遊層の私。朝方のスコールがまだ乾ききらない安宿街を歩けば、朝早くからマッサージ勧誘の女性たちの呼び声がウルサイ。もっとも私のようなジャランジャランだけでお金を使わない旅行者のことはとっくに見抜いていて、声をかけることもない。
その女を初めてみかけたのはビーチをジャランジャランしていたときのことだ。
ウットリとした表情で歌に没入しているのが遠目にもわかった。
あの女何を歌ってるのか?
近づいて耳を澄ませば、どうも「♪ハレルヤ〜ハレルヤ〜、、、」のシンプルなメロディの繰り返しで没我状態の雰囲気。
2度目に彼女を見かけたのは安宿街をジャランジャランしていたときのことだ。片手にギター、片手では白人少年の手を握っていた。
「ヤ〜、このあいだ、ビーチであなたが歌っているところを写真に撮ったよ」
「そうだったね、きょうはベビーシッターなのよ、ハハハハハ〜。あとでビーチにくるかい」
そしてモンダイは
3度目にビーチの彼女を見かけたときのことだ。
近づいていって声をかけようとしたその瞬間・・・・。
彼女はギターを脇に置くとギターケースの中から何かを取り出した。
銃だぜ!!!!
オイオイ・・・マジかよ、、、
そう思う間もなく慣れた手つきで弾をこめたではないか。
そして、立ち上がり、何かに狙いを定めると、
プシュ!!!!
一瞬白いケムリが上がったのが見えた。
銃声がしなかったところをみると消音装置がしてあったのだろう。
近くにいた誰も彼女が銃を撃ったことには気がついていない。
彼女の視線の先をたどると、真っ赤なビーチパラソルの下、この炎天下、ダークスーツに身を包んだ明らかにボディーガードスタイルの男たち4・5人に囲まれた、水着姿の白人男性の両腕がミョーな形で空をつかんでいる。
ホントに撃ったの?
ホントに当たっちゃったの?
彼女がギターケースに銃を収めようとしたとき、私と目が合ってしまった。
あきらかにギターを弾いていたときの声とは違う、ドスの効いた声だ。
呆然として立ち尽くす私。
アナタガ銃撃ッタ、オレ、見ナカッタ。
モシカスルト真夏ノ蜃気楼ヲ見タカモシレナイ。
膝がガクガクしている。
それで良イ
オマエはトモダチだ
オマエは何も見なかった
もし見たとしてもそれは真夏の蜃気楼だ
解ったな!
それではすぐにここから立ち去れ。
バックパックをまとめてクタから出るのだ。
秋になれば蜃気楼を見ることもないさ。
いつの間にか彼女の姿は消え、さっきの赤いパラソルの周りには人垣ができて、大きな騒ぎになっているのがわかる。
救急車だろうかパトカーだろうか、サイレンの音が徐々に近づいてくるのを感じる。
見てしまったぜ〜。ヤバイな〜。
うしろを振り返らず、急いでホテルに戻りそのままベットにもぐり、ガタガタ震えながらまんじりともしないで朝を迎えた。
クタビーチ狙撃事件の記事を探し出すことができなかったから
昨日のアレは
ホントに真夏の蜃気楼だったかもしれない。
a
あ
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