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2010年6月 4日 (金)

小暮写真館/宮部みゆき

「エクスキューズミー」

神田三省堂で本を買った帰りのことだ。背後からこんな女性の声があるのは気がついていたが、まさか自分に呼びかけられてるとは思わなかったから無視して歩いていると、その声は私を追い越して目の前に立ちふさがるようにした。

「・・・な〜んだ、久しぶり!元気にしてる!」

その声の主と初めて会ったのは3年くらい前の『養老の滝』で昼飯を食べているときだった。満席だから相席をお願いできるか?と顔見知りの店員が訊いてきたので「どうぞどうぞ」と応えると、目の前の席に座ったのがアラウンド30の白人女性だったのだ。

私の食べている安い飯を興味深そうに眺めて「それは何ですか?」と訊いてきやがった。

そのとき私が食べていたのは『牛筋煮込み定食¥600』だった。「ボイルド・ビーフ」とかなんとか答えたはずだ。彼女もそれをオーダーしたので、「この七味唐辛子を入れると美味い」と教えてやると、煮込みを真っ赤にするほど唐辛子をかけ、さらにサービスの生卵までご飯にかけて美味しそうに食べはじめたのだ。

養老の滝の白人女性と卵かけご飯という珍しい組み合わせに「生卵は大丈夫なの?」と訊けば「オーケーオーケーワタシはニッポンの食べ物大丈夫」というハナシだっ た。

牛筋煮込み食べながらリサーチしたところでは、この近くの企業で翻訳の仕事をしているアメリカ人だそうで、なるほど、達者な日本語に納得。

その後もお昼休みに路上でたびたび会うことがあって世間話などをしていたのだが、今年の1月ころからまったく姿を見なくなった。「アメリカへ帰ったのかな?」と思っていたところに「エクスキューズミー」だ。

久しぶりに会った彼女の話では6年勤めた会社をリストラにあい退社。その後一時的にアメリカに帰ったりしていたが、再び日本で求職活動をするべく戻ってきたのだとのこと。履歴書用の写真を撮りにスタジオへ向っていたら私を見かけて追いかけてきたというワケだ。

日本語で書く履歴書は難しいと言いながらも、失業を楽しんでいるように見えるのは、失業保険も出てるし、次の就職先のメドもたっているからのようだ。

「仕事が決まったらまた会おうね」

そう言ってアドレス交換して分かれたのだが、まさか白人女性から日本の失業保険制度を感謝されるとは思わなかったぜ。

というワケで、

そのとき三省堂で買ってきたのがこの本だ。

山盛りに平積みされていた本の中から、サンデー・フォトグラファーとしては、タイトルが気になって買ってしまった。

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小暮写真館
宮部みゆき

.
講談社
.
もう
会えない
なんて
言うなよ。

.
あなたは思い出す。
ど れだけ小説を求めていたか。

廃業した写真館の家に引っ越してきた一家が経験する不思議現象を、あまりオカルトっぽくならずに描いている。宮部みゆきは初めてだが、個性的な登場人物の設定をみて「宮部作品ってこんなにソフト路線だったの?」と思いながら読んでいるところだ。

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