イカリのジジー
この夏日本列島を席巻した『のりピー旋風』ももはや追憶の彼方!
暑い暑いといいながらも、吹く風の匂いにふと秋を感じて選挙の季節。9日間のまとまった休みに、読むつもりだった本に目を通すこともなく、暑さに集中できずけっきょく“積ん読”というヤツに終わってしまった。
この暑さに「ナニか暑さを象徴するネタはないか?」とカメラ抱えて徘徊すれば、アッチにもコッチにも同類の浮遊層。皆高価な器械を首から下げてツンノメリながら歩いている。スレ違うときに目を反らしたりして、そのクセ相手の器械を値踏みしたり。ホント、カメラは老後の愉しみとしては最高のオトナのオモチャだ。
写真を撮ろうと外に出るということは歩くこと→歩くことは健康維持の基本→だから、カメラ屋にとってジジババは→上客だ。
西新宿のカメラ屋で一眼レフの新機種を触りながら時間つぶししていると、背後から荒い声がする。どうやら客が店員に対して怒っているようだ。ファインダーを覗くふりしながら身体を回転させて、後ろの正面を見ると、店員がショーケースにアタマ触れんばかりにして腰を90度に折っている。
その向かいには左手にカメラを握りしめ右手は店員の顏を指差している70歳ガラミのジジー。
「そんなことはオマエに言われなくともワカッテル!」
店員の商品説明の仕方にジジーのプライドが傷つけられたということのようだ。もしくは、ジジーゆえのヒガミ根性が、店員のフツーの応対を悪意に受け止めたものか。
可哀想な若い店員はジジーの言葉に、「ハッ!ハッ!ハッ!」といちいち頷きながら言葉にならない声を発し、90度に折った腰をさらに95度に折って許しを乞うばかり。たぶんこの方法で嵐が治まるのを待ち、コトを収めようというのが彼の経験から生み出された作戦なのでしょう。
ジジーの言葉は当初の怒りの表現から、自分はいかにカメラに精通しているかとか、さるメーカーの対応の不備を指摘して謝罪させたとかをひとくさり喋っているあいだに、怒りが徐々に緩くなっていくのが傍目にも解ってきた。それに応じて店員の腰も90度から45度→15度と徐々に上がっていった。
要するにジジーは自慢話をしたいんだ。
話し相手が欲しいんだ。
やがて、ジジーと店員双方に笑顔が見え始め、けっきょくジジーはJCBのゴールドカードを財布から出して何やらサインしている。
オッ!
この店員ナカナカやるじゃないか!
そうだよ商売人て〜のは
客の理不尽にジッとこらえて
最後にカネを出させれば
勝ちなんじゃ!
それにしても、「お客様は神様」と言われて、反論のできない立場に於かれている店員に対して、ワレを忘れてイカるジジーというのも、見た目の良いものではありません。何か、年寄りゆえに味わう疎外感をこんな所で解消しているように見えて哀れさを感じるのだ。
あぁいうジジーにはなりたくないなぁ。
そんなことを思いながら、ジジーと店員のヤリトリをカメラのファインダー越しに見ているジジー予備軍がここにひとりいた。
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