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2008年9月 4日 (木)

外こもりのススメ/安田誠

「外こもり」という言葉も、そのうち広辞苑に載るんではないかと思われるほど知れ渡ったようです。

「外こもり」の定義としては「賃金の高い日本で働き蓄える→物価の安い国に長期滞在する」サイクルを繰り返す。つまり「引きこもり」が、日本国内で他者との関わりに背を向ける生活を送るのに対して、「外こもり」は「引きこもり外国版」というスタイルになる。

「外こもり」の海外拠点として人気のあるのが東南アジア諸国でその筆頭格がタイらしい。私がタイを旅行していたのは何十年も前になるけれど、その当時の感覚からしてもタイの物価の安さは想像がつきます。なるほど、タイだったら資金の有効活用ができるかもしれない。

昨年末から今年はじめにかけてカンボジアとベトナムを3週間旅行した。

この2国とも「外こもり」族には人気のある国になるらしいけれど、私が実際に現地で出会った日本人は皆それぞれ有給休暇をヤリクリしての旅行客で、少なくとも「外こもり」という言葉からイメージされる後ろ向きな人々という感じではありませんでした。

だから、旅行後「外こもり」という言葉を雑誌や新聞で読むたび「『外こもり』ってホントなの?ごく一部の海外滞在者の属性をメディアがセンセーショナルに取り上げているんじゃないの?という印象をもっていたワケです。

私の旅行は、安いゲストハウスに泊まり屋台で飯を喰うという、期間限定のバックパッカーでしたが、それでも、1日でも長い逗留を目指す「外こもり」に比べれば、“セーブマネー”の徹しかたが生温かった分、「外こもり族」と接触する機会がなかったのでしょう。

私がメディアのヤラセではないか?と疑った「外こもり」という存在が、最近かなり大きく扱われたのがこの事件。

2008.08.31(日) 産經新聞

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タイ中部で8月9日絞殺体で発見された棚橋貴秀さん(33)は、タイ滞在10年の元祖「外こもり」で、その世界では名前の知られた存在だったらしい。その、自由気ままな生活をエンジョイしているはずの「外こもり」生活が悲惨な結末になってしまったという記事です。

一般的な「外こもり」が日本での短期雇用で作った資金を外国で消費するというサイクルをくり返すのに対して、被害者になった棚橋さんはバンコックに滞在して10年になり、インターネットでの株式投資などで資金を捻出するノウハウを会得していたらしい。

けっきょくその資金目当ての犯行らしく、棚橋さんの口座から約1000万円を引き出したとみられる日本人男性に逮捕状が出ているとのこと。ネットで1000万円もの蓄財ができるというのも、ネット社会の現代を反映しているようです。

悲惨な結果に終わった棚橋さんが、「外こもり生活」を安田誠のペンネームで著したのが『外こもりのススメ/玄冬舎』という本。

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外こもりのススメ
海外のほほん生活
安田誠
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玄冬舎コミックス
2008.07.10 第1刷発行
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謎に包まれた外こもりの生態を解明?
外こもりをしているのはどういう人?
外こもりにおすすめの街は?
外こもりの収入源は?
外こもりはどんな生活をしているのか?

この本では、「外こもり」の定義から始まり、滞在に適した都市、ビザ問題の対処法、各国ネット事情、生活費の捻出方法など「外こもり」のためのノウハウをコミック仕立てで懇切丁寧に解説しています。

だから、あなたが「自分も外国で外こもりを!」と意図する人なら参考になるかも知れません。しかし、下記のような生活のリズムに違和感を覚えるような人は、あまり深入りしないで立ち読み程度で済ませるのが良さそうです。

同日産經新聞より

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「社会に息苦しさを感じている引きこもりやニートに、『何カ月か日本を離れて外こもりをしてみるのもいい』と訴えたい」

こんな棚橋さんの願いが叶って、「著書が紀伊国屋書店バンコク店にも入荷した」とホームページで報告した棚橋さんだけど、その喜びも束の間、出版1カ月後には死体で発見されたというのも皮肉なものです。

この本をパラパラ斜め読みして思うのは、こういう「外こもり」の生活に入るのは簡単だけれど、イザ抜け出そうというときには難しそうだな〜ということ。一時的な逃避のつもりが永遠に沈没などということになったら怖い。

「外こもり」族の側から自分を肯定する文章や、社会の状況とからめて「外こもり」解説する文章も多いけれど、けっきょくすべて個人の資質によるんじゃないか?というのが私の感想です。

沈みっ放しを選択する人もいれば
浮かびあがろうと必死にもがく人もいる
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ヒト様のヤリかたにどうこう言えるほどの身分じゃないけれど
これが
それぞれに与えられた生きかたのような気がします。

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