ヘイ・バブリバ
ユーゴスラビアという国についてどんなことを知っているかというと。
首都はベオグラード。多人種・多言語・他宗教の国。パルチザンの指導者だったチトー大統領によって均衡をが保たれていた。そのチトー大統領死亡時には大平正芳首相が病を押して葬儀に参列し、いわゆる喪服外交展開。帰国後大平首相死去。直後の衆院選自民党圧勝。
国父チトー大統領死亡後のユーゴスラビアはタガが外れたように分裂。内戦によりユーゴスラビア消滅。
と、この程度の心もとないもの。
そのユーゴスラビア1986年の『ヘイバブリバ』という映画をレーザーディスクで観た。

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(1986年ユーゴスラビア映画)
監督・脚本 ヨヴァン・アチン
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953年7月、ユーゴスラビアからイタリアへ漕ぎ進む一艇のボート。
向かうのは4人の青年と1人の美しい少女。彼らの目的は妊娠中の少女をイタリアに住むユーゴ人少佐の彼女の父親の元に届けるための密入国。運良くイタリア領海に到着し、少女は父親と再会保護され、その父親の計らいで4人組の青年も釈放される。
それから時を経た1985年のロンドン。
実業家として成功した亡命4人組の1人ポップが目にした新聞には、エスターことミリアナ・ジフコヴィッチという、30年前共にユーゴをボートで脱出した少女の死亡記事。
エスターの訃報はロンドンのポップから、ニューヨーク、ミラノ、パリとかつての4人組にもたらされ、故郷でとり行われたエスターの葬儀で30年ぶりに対面した4人の旧友と、正体不明のジョーと呼ばれる男。
それにエスターの娘。
エスターの埋葬を終えた4人組の1人がエスターの娘を呼び止めて言います。
「この中にあなたの父親がいます」
「どの方か知りませんが、、、会いたくありません。
私は母親の生前の希望で故郷に埋葬にきただけです」
感情を表すことなく立ち去るエスターの娘。
映画は再度1953年のユーゴスラビアへと戻り、4人それぞれが、エスターに対しての恋心を秘めながらも均衡の保っていた関係に、ジョーと呼ばれるバルチザン崩れが割り込むことで、エスターの妊娠という事実に対面し言葉を失うことになります。
この映画の背景は、チトー大統領の指導力によって、ソ連の影響力との訣別を企てた時代。旧富裕層の崩壊、親ソ派、党員、バルチザン出身者、闇屋などなどが複雑に入り組んだ大人たちの世界に皮肉な視線を投げかけながら成長して行く若者たちの物語は、ユーゴ版アメリカングラフィティという見方もあるらしい。
この映画に描かれた濃密な友情も恋も、そのかけらすら味わったことなく老いさばらえた身には、憧憬をもって見つめた展開でした。
チトー後のユーゴスラビアは崩壊の一途を辿り、コソボだとかセルビアだとかのニュースを聞いても、どのように分裂しどのように国境が策定されたのかのイメージも浮かびません。しかし、この『ヘイバブリバ』が1986年に公開された映画ということは、チトー亡き後の数年間、多人種多言語多宗教でもこんな優れた映画を製作できるほど調和を維持していた国だったことは理解できます。
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