ラワットさんのオーム
小田急線と井の頭線が交差する下北沢駅には戦後からのミニアメ横ともいえるマーケットが生き残っていて、2−3坪の商店や飲み屋がひしめいていました。
小田急線全線では“開かずの踏切解消作戦”で線路を高架にする工事が行われていて、その最終目標が下北沢駅。大規模な線路拡幅工事と駅ビル建設で下北沢駅周辺は見事に掘り起こされています。
こうなると、バラック作りのマーケットが目障りということになって、この場所にモダンなショッピングモールを建ててテナントを募集したいという、開発業者の欲求もとうぜんあるワケで、再開発推進派と現状維持派との論争も起きます。
推進派の主な理由は防災上危険ということになるようで、たしかに小規模商店密集のこの場所では、万が一火災発生の際には一挙に大事故になるという主張も理解できるし、維持派の「下北名物マーケット存続を!!!」という愛着にも心情的に共感できるものがあります。
20年くらい前、友人がこのマーケット内で2坪ほどの飲み屋をやっていました。ションベン臭漂う通路での立ち飲みスタイルというそんな店で、毎夜朝方までソドムとゴモラの様相を呈していたほどですから、素人経営ながら結構繁昌していたと思います。
戦中戦後から維持してきた古くからの店と、「小さくても自分の店を持つのが夢・・・」という私の友人のような新興勢力の経営するユニークな店とがウマくバランスとれて、外観とも相まってレトロなムードを醸し出していたのがこの一角でした。
私の友人もとっくにフェードアウトしまって、それ以来マーケット内部まで足を踏み入れることがなくなっていたけれど、久しぶりに内部を探検してみました。
あれほど百花繚乱ユニークなショップで賑わっていたマーケットも、すでに廃業してシャッターが閉まったままの店が大勢を占めていて全体が死に体モード。地上げとはいわないまでも、新規契約を受け付けずテナントが自然消滅していくのを待っている印象で、かつての活気溢れるフリーなムードは消え去ったようです。
なるほど、もう数年もするとこの一帯は更地になって駅ビルが建つんだなッ・・・。そんなことを思いながらシャッター通りを辿ると、何やらアヤシげな電飾煌めかせている店に突き当たった。ムカシ靴屋があったはずの場所に今度はカウンター10席ほどのインドカレー屋ができていたのだ。
“オームネタ”を見つけるには格好の場所だと店に入ると、マ〜達者なイントネーションで「イラッシャイ!!!」のお出迎え。
ナマステなセッションでリサーチすれば、この男性がリシケシ出身のラワットさんで、店の名前は『ラワットさんのMoet's Curry(モエツカレー)』というそうな。
「ところでラワットさん、この店にはオームはないの?」
そう言いかけて、目の前のガネーシャステッカーをみたら、な〜んだアッチコッチにオームがあるじゃないですか。
これまで何回も書いてきたように、カレー屋のオームマークは“出会いの妙”としてのグレードは低いけれど、いちおう、オームはオームだから記録しておきましょう。
ダルカレー、野菜カレー、タンドリチキンのセット
↓
天井からつり下げられたインドの神様オールスターのパネル。
そして伏見稲荷大社商賣繁昌御守護のお札。
「ラワットさん?インドの神様と日本の神様とどっちが良い?」
そう尋ねれば、ラワットさん曰く
日本の神様も
みんな同じ
.
神様に変わりはないでしょ!
明るく笑うのでした。
なるほど
なるほど
仰る通りです。
「ヤツはどうしているのかなぁ」
この下北沢マーケットでムカシ飲み屋をやっていた友人のことが気になって、グーグルに名前を打ち込んで検索してみたら・・・詳細は分からないけれど、沖縄に流れて行ったかすかな足跡がヒット。
彼とは25年くらいまえにセールスマンをやっていた時代に知り合ったもの。お互いに人生の敗者復活戦を賭けて就いたのがこれまたインチキ会社というアリ地獄。二人でどうにかこうにかそのインチキ会社を抜けたあとも連絡とりあっていたけれど、ヤツと会うたびに住所も商売も女も代わっていて、最後に会ったのが下北沢で飲み屋をやっていた時代だったというワケ。
地味一筋の私には「こんな男がどうして生きていられるのか?」と羨ましくなる自由さ。ワルくいえばチャランポラン。私は地味に人生の晩年を暮らしているが、彼の末路はどうなるのだろう。私の人生で出会った中での最異人種だけど、ネットから得た細かな情報をもとに、こんど沖縄に行った時はヤツの消息をたどってみようか。
オーム シャンティ
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あ
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