as time goes by
1974年、私はこのカサブランカに遊んでいたことがあった。
インド中近東を経てイタリアのシシリー・パレルモから、チュニジアに渡りアルジェリア経由でカサブランカに入るという、当初の計画からは想像もできなかったような、流れ流されての気ままなバックパッカー。
あれから30数年がたち、私はそのカサブランカをパックツアーの一員として訪れて、かつてのバックパッカーの身分では寄り付きもしなかったような豪華ホテルに宿をとっていた。
そのホテルのロビーで、ボーッとしながらテレビを見ていた私は、ハッとしてデジカメを動画モードにしてテレビ画面を撮影した。
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そのフランス語放送に映し出されているのはサダム・フセインの処刑シーン。誰がどういう意図で撮影したものか分からないけれど、こういう動画が一般に流されてしまうんだなぁ。
振り返れば私が気ままなバックパッカーだった30数年前、世界は「米・ソ」枠組みにがんじがらめに縛られて、良きにつけ悪しきにつけヤジロベー状態でバランスがとれてい時代でした。私たちのような若者がリュックサック背負ってヒッチハイクしながらどこへでも出没していた時代でした。私たちのような貧乏旅行者への寛容さがまだまだ残っていたと思います。
カトマンズ、ゴアビーチ、クタビーチ、声に出すだけで胸が高鳴る思いがする地名だけど、あのころ、バックパッカーにとって3大聖地といわれたこれらの地も、いまでは安穏としていられず、ましてやアラブ圏にいたっては、被害者の身でありながら、自己責任追求される危険地帯となってしまいました。つまり、個人旅行者が国際政治の駆け引きに利用されてしまうこともあるのです。
そんなアラブ圏にありながら、ここモロッコは目立ったテロ事件も起きず、空港のセキュリティもユルユルでノンビリしたもの。このあたりは王制からくる余裕なのかもしれません。そんなことを思いながらテレビを見ていると、フランス語放送はフセイン死刑に抗議するらしい群衆の姿を映した後、欧州サッカー情報へと変わったので、私はホテルのロビーをから街へ出たのでした。
30数年前の印象はとっくに消え失せていてファイルの断片を取り出すこともできず、ただ街を歩く。広場でボールを蹴る子供たちの姿を見て、バラックのCD屋でモロッコのヒット曲だというCDを2枚購入。一枚20ディラハム(260円)なり。屋台の茹で豆屋を見てると、一見してホームレスという服装の爺さんが屋台の青年になにか言うと、青年はスプーン一杯の茹で豆を爺さんの手のひらに乗せてやる。爺さんはもう一回お代わりをして、茹で豆食べながら何事も無かったような顔して立ち去って行った。そんなヤリトリを見ている私に気がついた青年はニヤリと笑いかけやがった。あの笑いにどんな意味があったのか。
時計台の傍からメディナ(旧市街)に入って行くと、路上にまで雑貨の店が並び、屋台からはカバブの煙がたちこめる典型的なアラブ街。薄暗い中に男たちが屯している異様な世界だけど不思議と危険さは感じません。店を冷やかしながらヤミクモに歩いているとちょっとした広場に出て、その一角にこんな看板を発見。
極真カラテはこんなアフリカの地にまで進出してきてるんだなぁ。
なにか同胞に出あったような嬉しい気分になって隣のカフェで一休み。男たちがカードをしたりして夜のひと時を楽しんでいます。後ろのテーブルから流れてくるタバコの煙の中に、明らかに市販されていないタバコの煙の匂い。さりげなく観察すると、指を焦がさんばかりに小さくなったジョイントをくゆらしてる男がいやがる。ここだけのハナシだけど、そのあたりになるとワタシャ詳しいよ。
今さら危険を犯す気はないから、自然に流れてくるケムリを“お流れ頂戴”で味わっていて、フトこの広場のこの景色に記憶があることを思い出した。
向かいのあの建物はユースホステルじゃないか!
そうだよ!ムカシ、こんなふうにこのカフェの椅子にすわってタバコ喫ってたんだよ。
やっぱりそうだ!
ドキドキしながら中に入るとロビーの2台のパソコンが今の時代を感じさせる。
毛色の変わった旅行者が来たと思ったのだろう。
管理人が「泊まるのか?」と訊くから「オレ、1974年にこのユースホステルに泊まってたんだよ!それで懐かしくって来てみたの。あの頃と同じ建物だよね〜」
「壁を塗り替えただけで建物は同じだよ。今日は日本人も3人泊まっているよ」
「ここは宿泊料はいくらなの?」
管理人はペーパーを見せてくれたけれど見えやしない。
「今じゃ、こんな文字も眼鏡がないと見えなくなったよう」
自嘲気味に笑うと管理人もつられて笑ってくれた。
ムカシだったら泊まったであろう一番安いドミトリーのベッドで45ディラハム。ということは5-600円か。あのころは幾らだったのかなぁ。
管理人が再び「泊まるのか?」と訊くから「今はリボリホテルに泊まってるんだ」。
「高いホテルだね。モロッコはビジネスか?」
観光だよ
9日間でモロッコ一周というグループツアーで来てるんだ
この思い出の場所を発見できて良かったな〜
センチメンタルジャーニーだね
管理人も納得した様子。
かくして、モロッコ最終日の夜は更けていく。
翌日には東京へ向けて、来るときは夕日を追いかける形で西へ西へと向かってきたわけだけれど、今度は東へ東へ朝日を迎えるフライトになります。
若いときのように無茶な旅もできなくなったけれど、年齢や体力に合った旅のやりかたがあり、こうして旅ができることを嬉しく思ったモロッコツアーでした。
ということで、
僅か9日間の旅行をネタにここまで引っ張ってきたけれど、
ひとまずモロッコネタはこれで終わりとなります。
ご購読ありがとうございました。
感謝を込めてこの動画を見ながらサヨナラサヨナラサヨナラ。
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