世界一周恐怖航海記/車谷長吉
最近のモーニングコーヒーのお供はこんな本。
平成5年秋、新婚旅行の帰りの車中。「東京へ帰ったら、本郷に家を買ってね。」と、当時身分不安定な著者に言う嫁はん。それでも5年後には本郷に家を構えるという甲斐性を見せます。すると嫁はんの今度のオネダリは「いずれ船で世界一周旅行に連れて行ってね。」というもの。 外国になど関心もないし、行きたいと思ったこともない著者だけど、嫁はんのあまりの“らんこん”に日本脱出を決意。それもこれも、自分が行かなかったら一人でも出発しかねない嫁はんの態度に、もし一人だけで日本に取り残されたらどうしようという強迫観念に駆られたもの。 そんなこんなで、、、、、選んだのがピースボート。ホラ、「青年の船」などと一緒で、よく新聞広告や街頭ポスターで見かける、90日間ほどの航海で寄港地では上陸しながら、地球を半周するという企画。 もともと外国に行ってナニを見たい、ナニをしたいという動機があったわけでもなく、ただ、嫁はんの後をついていただけの著者だから、1000人の日本人客を乗せた船を日本社会の縮図として、船内で見るもの、耳にする噂バナシ等々すべてに腹立たしい思いがします。 そうそう著者がいたく感動したことは、上陸地で見た道路清掃人の姿くらいか。ゴミだらけの日本を、文明が発達すると街も人心もゴミだらけになるものだと罵倒し、寄港地で見た、道路をゴミひとつないほど掃き清めている作業員を聖人にたとえ感動するというもの。 「なるほど、こんな旅行記もあったのか!」 この本からは旅行者として外国に接する期待も高揚感もナニも感じられないから、著者の体験を共有したく旅に出たくなるというような、旅行記にありがちな読後感がいっさいわき上がってこないという不思議な旅行記でした。 それでも最後まで一挙に読ませてしまうのはやはり著者の特異な才能なのでしょう。
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