横浜ローザはラーダー妃か
from えあじん

いったいこの戦争が誰にプラスになるのかさっぱり分からず、このままでは戦争のドロ沼に沈むだけだと誰もが思ったでしょう。一応の停戦協定が成立したけれど、それでもまだまだ和平への道は遠そうです。
8月15日(火)
テレビをつけるとどこのチャンネルも朝から小泉首相の靖国参拝番組。
「心の問題」というけれど、その個人の「心の問題」が、日本にアジアにこれほど波風を立てている現実があるのだから、そのことに対してはどのように答えるのだろう。
小泉さんが予定通り9月に退陣することで世間にはホッとした空気が流れるんじゃないかな。
こんなテレビの大騒ぎの画面を横目に横浜へ。
今日は横浜に「五大路子ひとり芝居/横浜ローザ」を観にいくのだ。
緑の公衆電話と簡易ソファーだけの舞台。
救急車のサイレンがだんだんと近づいてきて停まったらしい。
ソファーの膨らみが崩れ、毛布から姿を現した老婆が救急隊員らしき男と話している。
ハイハイ!どなたですか? これはまぁ救急車の方じゃありませんか?
エッ?心臓発作のお婆さん? イイエ~・・・ワタクシじゃありませんよ~
どこか別のビルじゃありませんか?
「また、あのババァだよ!」
という救急隊員の舌打ちが聞こえてきそうな沈黙のあとサイレンが遠ざかり、寂しさのあまりイタズラ電話を繰り返すこの老婆の独白によって、私たちはこの老婆の素性を知ることになります。
映画『ヨコハマメリー/中村高寛監督』に、ヨコハマメリーと呼ばれた実在の老娼婦を題材にして『横浜ローザ』というひとり芝居を演じた五大路子さんが、舞台を終えた後のそのままの衣装と化粧で横浜の街に流れるシーンがあります。その時実在のメリーさんは既にこの世に亡くなっていたけれど、腰が曲がりショッピングカートを引く白塗り老婆の“ヨコハマローザ”が彷徨う姿に、道歩く人々の「メリーさんだ」というささやき声がかぶさるようで、ヨコハマメリーがいかに横浜の街に馴染んでいたかが理解できる印象的なシーンでした。
髪を結い上げ、白いドレスに身を包み、まぶたの上には歌舞伎の隈取を少しチャーミングにしたような黒々としたアイライン。靴は低めながらもヒール。口紅は赤とエンジをミックスしたような色。でも、そこから放たれた、計り知れない高貴ともいえる雰囲気が異彩を放つ。(「白い顔の伝説を求めて/五大路子/壮神社」)
五大路子さんは街で見かけたヨコハマメリーの姿に衝撃を受け、それ以来、ヨコハマメリーの周辺取材を始めます。もちろん「これは芝居になる!」という“役者のカン”のような計算もあったでしょうが、それよりも、メリーさんを通じて自分自身の内面に分け入る旅に出たのです。
その結果が『五大路子ひとり芝居/横浜ローザ』として結実し、1996年4月の初演以来現在まで公演を重ねているもの。
もちろんヨコハマメリーの自伝的物語ではなく、戦後の横浜にどこからともなく現れ、夜な夜な街角に立って客の袖を引き、老残を隠す白塗りになってまでも苦界から抜けられなかったヨコハマメリーの姿を借りて、戦後の日本社会をあぶり出そうという故・杉山義法さんが作り出したのが横浜ローザ。
舞台の圧巻はなんといっても、腰の曲がった横浜ローザが白塗りに隈取した顔で、左手にショッピングバッグ、右手に一輪の真っ赤なバラを捧げ場内を一周する場面。
「ここまで落ちられるか!!!」
正に鬼気迫る迫る横浜ローザと目が合ってしまい、私の小賢しい日常が見透かされたようで身がすくんでしまいます。
今回の「五大路子ひとり芝居/横浜ローザ/於:横浜赤レンガ倉庫」
の舞台は8月12、13、14、15の4日間に渡って開催されたもので、
私が行ったのは楽日の15日。
何十回目かの終戦記念日に、
戦後の横浜と一体になった街娼をモチーフにした舞台を横浜で観るのもハナシのネタかと、
軽~い気持ちで行ったのだけれど、
故人となった作家と、白塗りの街娼が憑依したかのような女優の執念が
錐もみ状態で私の胸に突き刺さった舞台でした。

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. 白い顔の伝説を求めて 五大路子 壮神社(そうじんしゃ) 髪を結い上げ、白いドレスに身を包み、まぶたの上には歌舞伎の隈取を少しチャーミングにしたような黒々とした太いアイライン。靴は低めながらもヒール。口紅は赤とエンジをミックスしたような色。でも、そこから放たれた、計り知れない高貴、ともいえる雰囲気が異彩を放つ。どうして、彼女はあんな格好でこの街を歩いているの。なぜ、あんな白塗りをしているの。彼女のあの凛とした瞳から私に向けられたメッセージは何なの。 彼女を見かけたその日その瞬間から、 五大路子 .. |
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