イスタンブールへ愛をこめて
英国情報部Mのもとにトルコ支局長ケリムから奇妙な電報が届いた。
それには、
在イスタンブールのソ連大使館情報部に勤務するタチアナという女性が、
秘密書類でジェームズ・ボンドの記録を見て写真に一目惚れしてしまった。彼に会わせてくれ、
もしロンドンに連れて逃げてくれるならば、
お土産にソ連最新の暗号解読機レクターを盗み出す、
といってきたがどう思うか?
という電文だった。
これが、ご存じジェームズ・ボンドシリーズの最高傑作と評価の高い
「007/危機一発/ロシアより愛をこめて(英1963年作品)」の導入部分。
できすぎたハナシに罠の匂い感じながらも、
美女との休暇を楽切り上げた007ジェームズ・ボンドは、
急遽イスタンブールへと飛びます。
表の顔絨毯屋で裏の顔英国エージェントのケリムの案内で、
ボンドは早速ソ連大使館内部が見ることができる地下水道へと下りていき、
仕込まれた潜望鏡を覗いてみると、、、、。
そこで見たのは、
ケリムと敵対するソ連側エージェントと、亡命を希望しているというタチアナの姿。
長年の宿敵への復讐心をメラメラと燃やすケリムと、
一方のボンドは、、、、。
ロシア美女タチアナの姿に、
もともとキライじゃないから下半身がメラメラしてくるというワケよ。
ホテルに戻ったボンドを出迎えたのは、
ベッドの中で準備オーライ即対応と妖艶なタチアナ嬢の笑顔
・・・・・となるんだけれど、、、、、、、。
アレ~ッ???チョッと待ってよ!!!
ワシの記憶しているボンドさんとタチアナ嬢のファーストタッチは、
夕暮れのイスタンブール、
ガラタ橋の上でさりげなく出会った2人が、
お互いの品定めをするという手数を踏む設定だったのに~ッ!!!
すぐベッドインではこれじゃあまりにも1000メガバイトで速すぎるよ~。
40年前のワシのアタマにはこの地下水道とガラタ橋のシーン、
それに、
深夜、街なかの建物に描かれた看板の女性の口が開き、
隠れ家から逃亡しようとするソ連側エージェントのブルガリア人を
ケリムが狙撃するシーン焼きついていたのよ。
この映画を観てからは、
いずれ、イスタンブールに行き、
地下水道の中で船を漕ぎ、秘密の潜望鏡からソ連大使館内部を覗きたい。
アジア大陸とヨーロッパ大陸を結ぶ夕暮れのガラタ橋を女スパイを求めて歩きたい。
あの大口オンナの映画の看板を探したい。
こんな3点セットで、
イスタンブールに行きたいか~ッ!!!
福留アナの絶叫に煽られてニューヨーク目指した高校生がいたように、
イスタンブールへの想いを増幅させたワシは、
実際にイスタンブールへと旅立てジャックだったのよ。
だから、
「ロシアより愛をこめて」はワシをイスタンブールへと引き寄せた映画ということになり、
その映画のビデオを何十年ぶりかで観て、
アタマの中に長いこと刷り込んでいたストーリーと、
実際のストーリー展開の違いに気づいてショックを受けたのです。
でも、まぁ、一呼吸入れて冷静になってみれば、
同じ映画でも、上映国によって結末が違ったりすることはよくあるらしいから、
007ボンドとタチアナ嬢のファーストタッチがガラタ橋上だったり
ベッドインだったりという複数バージョンがあっても不思議なことじゃないか?
などと納得させたわけです。
前置きがけっこう長くなってしまったけれど、、、。
私がアジアハイウェイを経て憧れのイスタンブールに到着したのは1974年の夏のこと。
ユースホステルのマネージャーから得た情報をもとに、イスタンブールのランドマークとなっているブルーモスクとトプカピ宮殿の近くにある地下水道に早速行ったワケよ。
日本だと、あれほど有名な映画の撮影地だったら、
入り口に入場券自動販売機があったりするけれど、
イスタンブールのそこは誰でも勝手に入り込むことができる所で、
私は、「あぁ、この場所からボンドとケリムが小船でソ連大使館が覗ける場所まで行ったんだなぁ!」と映画のシーンを思い出して感動したワケです。
すっかり007気分のワシは「船はないかな?」などと周囲を見たけれど、モチロンそんな船なんぞあるわけありません。
イワシのフライを挟んだパンを食べながら歩いたガラタ橋では女スパイと接触することもなく、大口女の映画の看板も探せなかったけれど、とにかく地下水道が実際に存在したことを確認できて満足したモノズキな私でした。
映画ではケリムが「この地下水道は1600年前にコンスタンチヌス帝が作った」と説明している山の上の地下水道は、現代でこそ使用していないけれど、かつては“サイフォンの原理”で山の上に水を引きあげ、そこから市民の生活に供給したといわれ、トルコの土木工事がいかに進歩していたか、トルコの生活水準の高さを物語る証拠だと本で読んだことがあります。
007シリーズ第2作目の「ロシアより愛をこめて」は1963年の公開だから、
あれから40年。
改めてビデオで観れば、合成技術の未熟な部分は目につくけれど、ストーリー展開の緻密さと、息をもつかせぬアクションの連続は現代でも色あせず、この映画が永遠不滅の娯楽作品だということを気づかせてくれたのです。
イスタンブールは、西のギリシャほどヨーロッパでなく、東のイランほどアラブではない、まさに“東西の十字路”。
旅人の好奇心を満足させるに充分なエキゾチックな香りに満ちた街には違いありませんでした。

映画「ロシアより愛をこめて」から、
そんな街の雰囲気を感じとって、
イスタンブール目指したヤツが
少なくとも一匹いるのです。
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