りんご追分はアフロブルーと溶け合った
2005/02/26(日)
女流サックス奏者・早坂紗知を聴きに西武池袋線江古田駅前『Buddy』へ。
6時30分の開場を待ち『Buddy』の前に並んでいると、さっき江古田駅前で牛のカブリ物を着て「牛シャブ食べ放題!」と通行人に宣伝していた青年が現れた。そのとき、『Buddy』の外では100人ほどが開場待ちしていたから、たぶん、この青年はバイトのチラシ配りをしている傍で、どんどん長くなっていく行列を見て「何があるんだろう?」と気になって確認にきたのでしょう。
「エッ!マジかよ!スんゲーッ!
・・・・・何時までやるのかなぁ、、、、、、」
店の前に張り出された今夜の出演者案内ポスターを読んでいた青年が低く呟いた言葉を私は聞き逃しませんでした。
「ねぇ、ねぇ、『スんゲーッ!』てのは誰のこと言ったの?」
商売っ気起こして行列にティッシュペーパー配り始めた青年に私は訊きました。
すると青年は「原田芳雄さんですよ!聴きたいなぁ!」と答えたのです
今夜のライブに原田芳雄がゲスト出演するという告知を見て、牛カブリ物青年は驚いたわけです。
早坂紗知と原田芳雄のつながりは、毎年恒例の『新宿ブルースナイト』に原田芳雄が出演するときに早坂紗知がゲスト出演するというところから始まっているらしい。
私が早坂紗知を知ったのはこの『新宿ブルースナイト』が初めてで、芳雄親分の歌にしとやかに寄り添っていたかと思うと、ソロパートではフリージャズの暴れっぷりで自己主張し、再び芳雄親分の歌に絡んでいくという見事なパフォーマンスぶりに、いつかこの人のグループの演奏を聴かなければ!と思っていたから今夜のライブを心待ちにしていました。
そして、当夜のピアノが山下洋輔というのにも注目。
山下洋輔と早坂紗知の組み合わせは、山下グループに早坂紗知が加わったこともあり、いわば“師弟関係”のようなもの。巨匠・山下洋輔のおメガネにかなったサックス奏者だけあって、あのフリージャズへのアプローチも納得できます。
2月26日は早坂紗知の何十回目かの誕生日で、そのバースディコンサートも数えること今年で20回目。オマケに山下洋輔も同じ誕生日という奇縁でゲスト出演も15回目に当たるといいます。それに、もう一人のゲストが原田芳雄ですから、芳雄親分の歌に山下洋輔がどんな伴奏をつけるのか?
こんな異色のセッションを見逃すテはありません。

早坂紗知(sax) 川嶋哲郎(ts) 永田俊樹(b) 大儀見元(perc.)ウィンチェスター・ニー・テテ(perc.) コスマス・カピッツァ(perc.)
山下洋輔(p) ゲスト:原田芳雄(vo.)
『Buddy』は約300人ほどの超満員。
早坂紗知のファンクラブが主催してのライブだそうでアットホームな雰囲気が満ちていまて、そんな、いわば内輪ともいえる会場で紗知さんもリラックスした演奏を聴かせてくれます。
早坂紗知の音楽は、民俗音楽にインスパイアーされたワールドミュージックになったり、ときにはロックになったり歌謡曲になったりと、ジャンル分けが無意味に思えるほどヒュージョンしているけれど、ベースはもちろんジャズ。山下洋輔とのデュオで演奏した『♪My Favorite Things』や、原田芳雄の歌う『♪りんご追分』から『♪Afro Blue』につないだソプラノサックスはまるでジョン・コルトレーンを彷彿とさせるものがありました。
それにしても、華奢な身体のどこにこんなパワーの源泉を秘めているのでしょう。
音だけを聴いていたなら女流とはとても思えないほどのパワフルさです。そして、久しぶりに聴く山下洋輔は歌伴に回っても名人芸を披露してくれて、改めて巨匠の技を堪能したのです。
私はムカシはジャズ一辺倒だったけれど、この数年は、若いときに欠けていた音楽体験を補足するような気持ちで、“70年代フォーク”系のミュージシャンのライブを中心に聴いてきて、同世代のフォークミュージシャンがいまなお貪欲に音楽と戦い進化している姿に感動し励まされてきました。
やはり、音楽は作る方も聴く側も、その人それぞれの生き方を表しているものです。
「音楽にジャンル分けは無意味!」
とわかりつつも、
「今夜はジャズを聴いたなぁ」
と思わせてくれたライブでした。
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