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2006年1月14日 (土)

大仏破壊

前便でバーミヤンの仏像のことを書いたら、今夜またNHK-TV「クローズアップ現代」という番組で、バーミヤンを取り上げていた。アフガニスタン情勢が落ち着きつつあった2002年から、日本の調査隊がバーミヤンに入り遺跡の調査を再開していたらしい。

その結果、爆破された大小2つの大仏像周辺からは新たな仏教遺跡も発掘され、7世紀にこの地を訪れた三蔵法師がバーミヤン訪問記に表した「長さ300メートルの仏陀黄金涅槃像」確認の期待も高まる。これらの遺跡が発掘されたなら、一大仏教聖地だったかつてのバーミヤンの姿が再現されるだろうという胸躍るレポートでした。


2006/01/12 NHK-TV クローズアップ現代
「バーミヤン発掘 幻の大仏は・・・」より。

こんな夢のあるレポートの反面、この一帯はいまだに地雷原であること、さらに、地元住民の住居や畑など生活の場所でもあり、遺跡調査のために立ち退きを迫られる住民の生活をどうするか?という問題に直面しているというのです。たしかに、日本だったら“重要文化財クラスの壁画”がある洞窟の中で暮らす家族もいて、建国途上のアフガニスタン政府にはこれらの人々の生活支援をする力はありません。ユネスコにも遺跡発掘の資金は供出はできても、地雷撤去や住民支援という余裕はないというのです。結局「文化財保護」という“先進国の尺度”と“住民の生活”とのバランスを模索するということになります。

私は、、、、、、。
破壊された巨大仏像の前面に埋もれているだろう仏教遺跡発掘に、スコップ持って参加している自分の姿を夢想してワクワクする気分でした。

2001年3月のバーミヤンの大仏破壊を取り上げた素晴らしい本を紹介いたしましょう。


大仏破壊
バーミヤン遺跡はなぜ破壊されたのか

高木徹

文藝春秋
\1,571
大仏破壊は、9・11同時多発テロを
予告するビンラディンのメッセージだった。

戦争広告代理店』で講談社ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞。そして、第36回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

『ツインの仏像と、ツインのタワー、その両方を破壊したわけですね』
『“大仏破壊”は9・11”のプレリュード(前奏曲)だったわけです』

『ツインの仏像』
というのはバーミヤンにあった2体の仏像。
『ツインタワー』
というのはニューヨークにあった2棟のビルディング。

西アジアの辺境の地にあった古代の石窟像と、ニューヨークにあった現代技術の粋を集めたビルディングという対照的な2組の造形物が
なぜ破壊されなければならなかったのか?
どのような経過で破壊されたのか?

著者はNHKのディレクターで、略歴に紹介された担当番組を私は全部見ていたことに気がつきました。これまで放送された内容に、当時のアフガン政府関係者や、破壊回避に奔走した国連関係者などへの取材で得た情報を加えて検証したのがこの本。

小さな神学校の管理人でしかなかったオマルが、ボランティア的タリバンというグループを足がかりに、やがてアフガニスタン全土を掌握していき、さらに、タリバンに寄生する存在のビンラディンが、アルカイダとなって母体のタリバンを飲み込むことになります。

当初タリバンを支援したのは同一民族としての連帯感がある隣国パキスタンであり、「タリバンでも何でもアフガン国内を統治できるなら」という思惑のあったアメリカ。しかし、タリバンが過激なイスラム原理主義アルカイダの管理下に於かれ、コントロールがきかなくなると見捨てるという大国のエゴが炙り出されます。

「大仏破壊のメッセージ」が「9・11」にリンクするまで、国際社会はアフガンに対して何の関心も示してこなかったという著者の叫びは胸に残ります。そしてこの本はこんな文章で終わっています。

バーミアンの大仏は、今も破壊されたときのままである。その後、各国が資金を出して再建する計画があると報道されたが、進展していない。新しく仏像をつくったところで、それが千数百年の時を超えてきた大仏の代わりになるはずもなく、むしろ、吹き飛ばされた大仏像のあとにむなしく残る、天然の崖の巨大な穴の姿のまま保存したほうが「なぜ、大仏は破壊されたのか」「なぜそれを防げなかったのか」「破壊の本当の意味は何だったのか」を永久に問い続けるという意味で、よほど価値あることに人々が気がついたのだろう。



     
『あらゆるものに時がある
    壊すにも時があり 作るにも時がある』


昔むかし、あの2体の巨大仏像が作られたことにも“その時と意味”があっただろうし、今世紀、爆破されたのにも“その時と意味”があったのでしょう。そして2体の巨大仏像があった前面に広がる平野から、新たな仏教遺跡が発掘されていく過程が私たちに提示されていくことにも“その時と意味”があるのだと思います。

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